やめるのやめた -28ページ目

苦行イレブン

 仏教の修行に、苦行というものがある。

 自分の体をわざわざ痛めつけることによって、悟りを開こうとするらしい。

 最近、身近に一人、恐るべき苦行を行っている奴がいる。
 彼は痛む虫歯を強靱な精神力で放置し、その結果、歯を11本も抜くことになったのだという。
 

 超人である。

 常人であれば、虫歯になった時点で耐えられず歯医者なんぞへと赴く訳である。
 よほど我慢強い人でも、自分の口内がズタボロになるまで耐えることなどできやしない。
 ましてや歯を抜くなんて想像しただけで卒倒しそうだ。
 それを11本である。
 サッカーチームができるほどの数だ。

 さらに、この苦行を行ったことにより、若くして世間から、
「歯抜け」、「おじいちゃん」、「入れ歯」、「ポリデント」
 などと罵倒され、煎餅すら食べることができない、

 阿鼻叫喚地獄がこれから何年も続くのである。

 歯と引き替えに、彼は悟りを開くのであろうか?


 関係ありませんが、「はははのはなし」という、

 昔よく歯医者に置いてあって絵本知ってますか?

困ってしまってワンワンワワーン

「隣の席の子に、毎日『地獄へ堕ちろ!』と言われて、

   『学校を辞めたい』と言っています。どうしたら良いでしょうか?」

 なんてな相談を連絡帳で受けた。

 

 この二人が犬猿の仲であることは日々の様子から明らかである。

 まずは、「地獄へ堕ちろ!」と言うのが日課であると言われている隣の子に聞いてみた。

「それは言っていない。」
 と言う。
「じゃあなんて言ったのだ?」
 と聞くと、
「バカ」、「アホ」、「ドジ」、「マヌケ」
 などを言ったのだそうだ。
 ついでにちょこっと軽く叩いてしまったそうだ。
 まあ極めてオーソドックスな意地悪である。
 ついでに毎日ではなく、時々だそうだ。

「他には?」
 と聞くと、
「死ね」
 と言ったことを認めた。
 それはよせよと諭しつつ、ついでだから、
「なんでそんなこと言うの?」
 と聞くと、突然ぶわっと涙が溢れ、
「わざとじゃなくて、ちょっとイスや机に触っちゃっただけで、『触らないで』ってきつく言われるから・・・。」
 と泣き出した。(当然、ここでもらい泣き)

 これはもうどっちが悪いのかわからない。
 困ってしまってワンワンワワーン。
 とりあえず二人を呼んで給食を一緒に食べながら話した。
 今度は初めに訴えた側の子が泣き出し、

 自分も悪いことをしていたと話し出した。(もらい泣き②)

 「学校辞めたいの?」と聞くと、首を横に振った。

 こうして今日も大岡裁きのように一件落着。
 しっかりもうしないと約束し、仲直りをしたが、

 互いに気が強いのでまたすぐもめるだろうな。

 ま、そんときはそんときだ。

号泣教室

 今日は5人泣いた。

 いつも笑顔のうちのクラスでは異例である。

 1人は友達のイスの足に、自分の足を踏まれて泣いた。
 1人は着替えるのが遅くて体育に遅れ、チームの友達に気付いてもらえず泣いた。
 1人は転んで顔面を地面に痛打し、鼻血を出して泣いた。
 1人は例によってサッカーでもめて泣いた。

 そして泣いた子たちをなぐさめたり、笑わせようとしている子たちの姿を見て俺が泣いた。

スイッチ

 昨日はライブ。

 緊張したけどちゃんと新曲もやれたし、評判もまあまあ。

 打ち上げもそれなりに参加して、終電逃してタクシーですわ。
 ほんで風呂入ったりなんだりで、寝たのは3時。
 そして7時に起床。

 そうすると俺はもう先生なんですね。

 寝不足や二日酔いで、この切り替えスイッチがブッ壊れると、

 歪みっぱなしのロックン教師、紙一重先生のできあがりなのですが、

 いつも割と普通に切り替わっています。

 こうして昨日のライブでは、「半分死んでる」なんてコーラスしてたロクデナシが、

 朝の会ではちびっ子の前で「みなさん、おはようございます!」なんて、

 爽やかなクリーントーンで挨拶なんぞをしているのである。

コバンザメの恩返し

 今起きた。

 結局昨夜は昼間寝過ぎのせいであまり眠れず、スペースシャワーなんかをちょろちょろ観てた。

 detoroit7ってバンドが出ていて、インタビューされてた。

 そう言えば前回シェルターに出たときは対バンだったなぁ。


 あれはシルクウォームってアメリカのバンドの来日ツアーのサポートさせてもらった時だ。

 25m.FLOATERという神戸の友達バンドに呼んでもらったんだ。

 今回シェルターに出れるのはベルトパンチのレコ発ファイナルに呼んでもらったからだ。

 ベルパンには本当に世話になりっぱなしだ。

 音源の制作も進まない。

 新曲もなかなかできない。

 こんな調子でいつもだらだらしている割には良い企画に出させてもらっている。

 こういう人達にいつか恩返しができるのだろうか。

 まずは今日良いライブをやって企画を盛り上げることだな。

 よし。弦を張り替えよう。

喰っちゃ寝地獄

 朝起きたら昼だったので、昼飯喰って昼寝して、な~んもしない一日だった。

 さっきもボケ~っとフォレストガンプなんか見てたりして。
 こんな話だったのね。

 それにしてもいい加減にして欲しい。
 まだ風邪が治らないのだ。
 既に発病から2週間が経った。

 こうなっちまうと人間なんてメシ喰って寝るだけだ。

 喰って喰って、寝て寝て・・・。

 なんで治らない?
 栄養も睡眠もやり過ぎなくらいなのに。
 タバコも酒も止めてるのに。
 何が足りない?

 こんな状態でも明日はやってくる。
 ほんで明日はライブなのだ。

 まあ熱も大したことがないから頑張れるだろう。


 ウッシャー!晩飯も喰ったし、寝るべ!

前半26分

 泣きながら教室へ帰ってくる子たちを見て、
「どうしたん?」
 と、聞いてみると、
「こんなチームで勝てる訳がない!」
 と、大激怒。

 聞くと、サッカーをやって遊んでいたのだが、

 チーム分けの時点で悪知恵の働く奴が、

 うまいこと自分のチームが強くなるように仕組むのだそうだ。

 彼らはまだサッカー自体に喜びを見出してるのではなく、

 勝ったことや、点を決めたこと、

 或いは先生と一緒にやったことが自慢なのである。

 考えてみれば、俺が一緒にやってるときはそれだけでみんな温厚なのに、

 一緒にやってないとだれかが泣いて帰ってくることが多い。

 先生がいない時点で、スポーツマンシップは消え失せ、

 みんな青葉学院の監督のように、自分達が勝つことのみに真剣なのだ。

 つまりちびっ子の世界では、“正々堂々”とか“公平”なんてのは二の次なのである。

 こうして毎日毎日、入れ替わりで泣いてる彼らの話を聞いてると、

 休み時間は20分しかないのに、
「前半の26分にファウルがあって・・・」
 なんてな熱弁も聞く。

 審判なんていないのに、
「あいつはレッドカードなのに退場しなかった!」
 と、力説している子もいる。

 報告を聞いては笑い、
「じゃあどうすんの?」
 と考えさせる。
 その繰り返しなのである。

 誰がどっちの味方なのか、ゴールは何処なのか、

 そんなこともハッキリしないままのゲームで、

 毎日誰かが激怒して爆発しながらも、

 次の日にはケロッと忘れてみんなで遊んでいるあいつらは、

 子ども丸出しで素敵なのである。


ちびっ子恋愛ドラマ

 ある男の子が、ある女の子を好きなようで、連日教室はその話題で盛り上がっている。

 そして今日の給食中、別のある女の子がその男の子に対して、
「あたしもあなたのことが好きだけど、あきらめるから頑張って告白しなよ!」
 と、白昼堂々、衝撃の告白!

 男の子は、
「そういうこと大声で言うなよぉ。」

 と、照れくさそうにしていた。

 さて、そのターゲットであるところの女の子は、

 自分がそんなことを思われてるなんて知らない様子で、

 今日もおかわりジャンケンにこれ余念が無く、

 必死にヨーグルトを勝ち取りガッツポーズをしていた。

 しかし、本人以外はうすうす感づいているようで、

 その子の周りでは女の子が数人、

 何となくその子を避けるようにどうやってくっつけようかと、

 ひそひそ話をしている。

 さらにそこへ勘違い野郎が登場。

「先生、あいつ最近独りになること多いから俺がかまってやるよ。」
 んなことは一言も頼んでいないのだが、
「お前良い奴だな。」
 と、火に油を注いでみる。

 こうしてターゲットである女の子が第二の男が仲良くなっていくと、

 また教室中大騒ぎである。

 鈍感な女をめぐって、煮え切らない男、自分を犠牲にする女、

 正義を気取る男が繰り広げるちびっ子恋愛ドラマ。
 

 また明日どんな物語が展開するのだろうか。


 さらに第三の刺客が登場すると楽しいなぁ。

胡蝶の夢

「今朝、地震が起こった夢見たんだ。」

と、子どもたちに言ったら笑われた。

おへそビーム

 大勢の小さな子どもたちを集中させるにはそれなりのテクニックが必要である。

 「話している人の目を見て」
 なんてなことを言う先生もいらっしゃるが、

 天才達にそんなことを言っても全体に浸透するまでに時間がかかってしまう。

 無駄な説教時間を減らすことがゆとり教育にとっても大切なのである。

 二日酔いのある朝、ヤケクソで、
 「さあみんな、先生に向かって目玉ビ~ム!」
 と、言ったところ、全員の目玉が本当に一瞬でこっちを向いたのである。
 これは使えると思い、その日から「目玉ビーム」が教室を飛び交った。

 しかし、「目玉ビーム」には重大な欠点があった・・・。
 こちらを向くのは首から上だけなので、集中力が切れるのもはやいのである。

 そこで苦悩の末に編み出されたのが、「おへそビーム」である。
 おへそビームを発射させることにより体全体をこちらに向けさせるのである。
 さらに、勝手に手をへその前で固定してポーズを決めてくれるので、手イタズラも減る。

 唯一の欠点は、「おへそビーム」と同時に、「ビ~~~!」っという、「お口ビーム」も出てしまうことである。